失戀

毀たれた恋心が僕のまぶたを引っぺがした

孔雀石のかたちをした想い

簾をすかして吹く午睡の吐息と

まなつの夜のプールの  塩素錠剤で満たされた暗夜の藍青と

未熟のまま落果した渋柿の色が混じり合い

腹這いで袖を滑り止めにしてひねるあんずジャムの壜を開くと

トーストの焼けるにおいが台所にたちこめて

夜通し泣いた後のぐずぐずの味がした

セーターの襟ぐりから僕の恋心は逃げるとして

それはきっと縫われた糸のほつれ目で

繊維を引っ張ってゆくうちに

自然と編み目が泣きくずれてゆくもので

なんてことはない風邪のひきはじめの微熱によく似ている

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA