晩餐

豚の晩餐会に誘われた

それは一種の名誉と考えられた 

赤い封蝋を捺した角封筒

ひび割れた蹄の印を剥がした

牧草の漉き込まれた便せん

几帳面な筆記体

荘園領主のマナーハウスへつづく蛍火の垂れる畦

芽吹きを胚胎する暗緑色の森

苔の手土産を蔓草で結わえ

ゆくだろう 浮世離れした木漏れびとの妻をたずさえ

杜松の瘤から生まれた木偶のわが子を抱きかかえて

木の瘤

子豚

三本足の豚 

足下にまとわりつく無数の豚たちが

僕らを歓迎した、そののち僕らを拒絶した

僕らの正装はみすぼらしく、領主の晩餐に似つかわしくないと

見くだされた判断は

烙印として僕らの皮膚を灼いた

燭台のろうそくの火が揺らぎ、食卓の空気がおもったるく粘度を増した

柱時計の振り子が融点を迎えしたたり落ちてゆく

僕の脂汗が皿に落ちてラードの泪と化した 

妻の存在が薄らぎ

子どもらが癪を誘発し苔を吐いて粗相をした

彼らの流儀に従うため

僕らは喉のとげとげしさを抑える整涼剤を飲んで

飼い葉を平らげるため

三角形をした酵素剤を六錠飲んだ

つまるところ客人としての正当な接待を渇望した

あるじの嫌味で上品な笑顔

ナプキンでぬぐわれるぬれた豚鼻先 

推し量られるすべてを探るための血走る眼球

天秤の分銅と釣り合うまで歪めあう晩餐のひととき

時間だけが流れを淀ませてゆく