雪融けの流水に洗いぬかれた骨片の体を木陰にさらそう
白く漂白され 木管楽器としての空洞を抱えて
数多の別離の季節は爪弾かれてゆく
やがて骨は月日の重みに耐えかねて
おのずと生じた割れ目や陥没を
無数の怠惰な苔が繁茂した
すなごけ
ぎんごけ
骨という骨を
ビリジアンの海嘯がおし広めた
骨はみずからを次世代へ繋ぐ苗床と定義しなおし
逓信病院の廊下のようなリノリウムの草原を
葉緑素でいっぱいに満たして
決して土に混じわることなくこの惑星の文明の果てまで
見届けようとした
炭素を含んだ一個の骨のままで