陰毛との一夜

高校の修学旅行の夜、シティホテルに友人と宿泊したのだが、

その友人は陰毛のような髪をした底抜けに陽気な男で、

おい君、君はどんくらい腋毛が生えているか、としきりに尋ねてくる。

尋ねてくる分には可愛げがあるが、なあ少し腋をあげて見せてくれ、としきりに強請ってくる。

もう寝ようと提案するが、駄目だ見るまでは寝ないと駄々をこねる。これには閉口した。

僕がいやだよ、腋毛なんて他人に見せるもんか、と云うと、

じゃあ無理にでも見てやろうと、がっぷり四つに組み敷いてくる。

この陰毛男は、ひょろっとした体つきのくせして存外握力が強く、嫌がる僕の腕を

強引に持ち上げ、腋をじろじろ凝視してくる。

ふうん、なかなか毛深いね、とばかにしたように云うから、かっとして、

じゃあ君のも見せてみろと云ったら、やっこさん、喜んで万歳の姿勢をとる。

その腋毛が髪質とおなじ縮れた陰毛状だったから、

思わず、なんだ腋の下までチン毛が生えてるじゃないかと口にしてしまい、

えらく不興を買った。

その件はそれで収まったのだが、その晩、陰毛と枕を並べて寝ようとするも、どうにも眠れない。

陰毛のやつのいびきがうるさく、寝ようとしても寝つけない。

静かにしろと怒鳴りつけてやりたくとも、相手は夢心地なんだから仕方ない。

そんなら先の仕返しをしてやろうと、細かく裂いてぬらしたティッシュを相手の鼻に詰めこんだ。

するとなんの拍子か、やっこさん、ずぞぞと下品な音を立ててぬれティッシュを吸い込んでしまった。

このままでは窒息するかもしれん、と大わらわでティッシュを除くが、

破れた欠片が鼻の奥に吸い込まれ、もはや手の施しようがない。

まさか鼻をほじくる訳にもいかず、翌朝変死体で発見されたらどうしようかと気を揉んだが、

だんだん考えるのが億劫になり、ええい、どうとでもなれと自分のベッドに戻って不貞寝した。

結局、陰毛は朝まで目覚めることなく、翌朝も元気はつらつとしていたが、

吸い込まれたティッシュのかけらがどうなったのかは、ついに分からずじまいである。


昔はてな匿名ダイアリーに投下した文章です。

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