孤独なのけ者
住む家をもたない 着る服をもたない
慈悲をもたない 愛する心をもてない
彼は食べるためなかばの暗い森をうろつく
煮炊き火の宿る里をうろつく 苔むした塁壁の城址をうろつく
歩みはのろく 行くあてもない
彼は恃めるなかまをもてない 彼は誰かと出会うための服をもてない
裸で歩き 裸で考え 裸で眠る
積み重ねすぎた孤独のため、なかまと食べものの区別がつかない
彼はなかまのケモノの肉を喰らう
皮をひき裂き 肉を啖い 骨の髄までしゃぶる
ときどき彼は心穏やかに保とうとして地にひれ伏しひとり祈る
のけ者のおぞましい声は 色のないモノロオグとして
無人の森のしじまに 木立のざわめきに溶けこんでゆく
彼はひれ伏し満たされるのを待つ
満たされないという事実に満たされるまで ただ ぢっと待つ