見事な月が漂う晩なので
僕らは全身を無数の月光で貫かれてしまい
ほとんど瀕死状態だったのだが
酒飲みの卑しさで まだ飲み足りないとコンビニで安酒を買い
川辺で月見酒と洒落込んだ
冬枯れの葦の繁る土手を
体の無数の傷穴から酒気を垂れ流してよろめき下った
上着のポケットに突っこんだ肉まんが
食べられる熱源として満足感を与えてくれる
川べりに腰をおろし ワンカップのプルタブを引いて
月世界の末裔たる者たちへ献杯した
きんきんに凍らしたウォッカの川は水量が乏しく
とろりとしたゼリーの煮こごり
遠くの鉄橋の灯りが青ざめて心細く宿っている
友人は外套の袖を二度ほどまくると
川辺に落ちている手頃な石を拾いあげ
その平べったく凍えた塊を川面へ投じた
水面へ浮かぶ満月の円かな浅黄色をうち壊さんと
ふたつ みっつと抛りだした
月影は一瞬ゆらめくものの
またすぐそのなめらかな輪郭を取り戻し
ほうっとしたシルエットを水面に映しだした
僕らはことばもなく 勇気づける酒ももはや尽きて
しんみりとした夜気がくたばりゆく僕らの
マフラーの繊維を冷気がきつく噛んだ